Q(社長の質問)
入社して3年程度の従業員Aがいますが、なかなか業務に適応できず、ミスを繰り返しており営業成績もとても低い状況です。Aよりも後に入社した従業員の方が会社の業務に慣れて成績を上げており、Aは上司だけではなく、後輩の従業員からもフォローを受けて仕事をしています。成長の見込みがないので、できれば早いうちに解雇したいのですが、可能でしょうか。
A(弁護士の回答)
労働契約法第16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めています。
法律上、解雇が認められるほどの能力不足とは、雇用関係が維持できないほどの重大な能力不足で、かつ、改善の見込みがない場合をいいます。
Aさんは、後輩などの他の従業員に比べて成績が低いようですが、成績が低いだけでは、労働契約法第16条の要件を充足させることは非常に難しいといえます。実際に裁判例でも能力不足を理由とする解雇が有効と判断されるケースは少ないといえます。
能力不足を理由とする解雇が有効となるかどうかのポイントは、①当該従業員を雇用し続けることによって業務運営に重大な支障を及ぼす、②当該従業員の能力不足を理由とするミスが頻発しており、会社に現に損失が生じている、③上司らが繰り返し改善指導しても、改善の兆しがみられない、④上司らによる成績評価が客観的で平等である、といった要件をいずれも充足する場合に、能力不足を理由とする解雇が認められやすいといえます。いずれか1つでも欠く場合には、解雇の言渡しに慎重にならなければなりません。
浦和セントラル法律事務所
弁護士 坂根 洋平