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1 売掛金は早期に回収しよう-消滅時効を理解しよう-
⑴ 売掛金の消滅時効
売掛金には時効があります。
つまり、いつまでも回収せずに売掛金を放置すると、ある時期の到来により売掛金を請求する権利は、時効により消滅します。これを消滅時効といいます。
以前までは、売掛金の種類に応じて消滅時効の時期が異なる、「短期消滅時効」という制度がありましたが、民法が改正され、2020年4月1日からは短期消滅時効は撤廃されました。
2020年4月1日以降に発生した売掛金債権については、基本的に、権利を行使することができることを知った時から5年(新民法第166条第1項1号)となりました。
万が一、何らかの事情により売掛金債権を行使することができることを知らなかったという場合は、権利を行使することができる時から10年(新民法第166条第1項2号)となります。
⑵ 時効の更新(旧「中断」)
時効の更新(旧「中断」)とは、消滅時効に向けてこれまで進行してきた期間が振り出しに戻る、ということです。
代表的な時効更新事由は、債務者による債務の承認です(新民法第152条)。
具体的には、①債務の返済猶予を求める言動、②債務の一部の弁済(返済)、③債務を認める文書への記名や捺印などが、承認に該当します。
債権者側としては、滞納が長く続くようであれば、売掛金債権が消滅時効にかからないうちに、まずは、③に取り組むことが効果的です。具体的には、取引先の代表者に、「書面」で一定の期限までの返済を約束してもらうこと(文書には記名や捺印をもらうこと)が大切です。
口頭で債務の承認がなされた場合であっても、その事実を立証できるのであればよいのですが、多くの場合、言った言わないの問題となり、立証が困難であることから、書面で承認をしてもらうことが重要です。
2 売掛金の滞納が生じたらやるべきこと
⑴ 協議を行う
支払期日に売掛金が支払われない場合、まずは、取引先(債務者)と、支払いに関する協議を行う必要があります。
協議の方法は、電話・メール・対面いずれの方法でもよいですが、できる限り、具体的な約束をしてもらうことを心掛けましょう。
いつまでに支払ってもらえるか、あるいは、いつまでに返事をしてもらえるか、分割払いとなる場合にはどのようなスケジュールで支払ってもらえるのかなど、ある程度具体性をもった話をしたいところです。
また、協議の際に、支払が滞っている理由も具体的に聞いてみることも大切です。
可能であれば、取引先の操業状況、他の債権者との関係、すでに引き渡している商品等の保管状況を聞いてみるとよいといえます。
他の債権者よりも先に手を打つことが、債権の回収可能性を高めることになります。
⑵ 内容証明郵便により支払請求をする
相手方が協議に応じない場合や、応じたとしても、いつまでも売掛金を支払わない場合には、粛々と、法的手続きを進める必要があります。
まずは、内容証明郵便により通知書(請求書)を送付します。
会社名義で送付するか、弁護士名義で送付するかは、相手方の態度しだいですが、協議そのものを拒絶している場合には、弁護士に依頼をして、弁護士名義で内容証明郵便を送付した方がよいといえます。
内容証明郵便を用いて支払の催告をすれば、内容証明郵便が相手に到着した日から6か月間、時効の完成が猶予されます。
⑶ 内容証明郵便を送付しても支払がなされない場合-裁判所の手続きへ-
内容証明郵便を送付しても支払がなされない場合には、もはや、催告をするだけでは効果がないと思われますので、裁判所の手続きに移行する必要があります。
具体的には、支払督促、少額訴訟、民事調停、民事訴訟、仮差押えのほか、債務名義取得後は、強制執行などの方法があります。
会社の経営者様あるいは担当する従業員の方が、これらの裁判上の手続きを自力で進めることは困難であると思いますので、弁護士に相談の上、適切な方法を選択する必要があります。
3 売掛金の回収にお悩みの方へ
ここまで、売掛金債権の回収について簡潔に説明しました。
当事務所は、債権回収の豊富な経験から、ご相談者様の会社の状況に合わせて、最適な手続をご提案致します。
取引先が、債権・売掛金等を支払わない場合、まずは当事務所へご相談ください。