労災事故でお悩みの事業者様

1 労災保険による補償

労災事故でお悩みの事業者様

労働者が、業務上の事由または通勤によって労働災害(労災)に被災した場合に、災害補償保険(労災保険)は、労働者の負傷・疾病・障害・死亡等による損害を補償しています。

⑴ 療養補償給付(療養給付)

療養補償給付(療養給付)は、療養の給付、すなわち、診察・薬剤・治療材料の支給、処置・手術、居宅における看護、入院・看護、移送の現物給付等の治療に関わる給付を行います。

⑵ 休業補償給付(休業給付)

休業補償給付(休業給付)は、療養のため労働できず賃金を受けない日の4日目から支給されます。その額は、1日につき給付基礎日額(平均賃金相当額)の60%とされています。

⑶ 障害補償給付(障害給付)         

障害補償給付(障害給付)は、労働災害による負傷・疾病が治癒(症状固定)したときに身体に障害が存する場合に、その障害の程度に応じて、障害補償年金(障害年金)または障害補償一時金(障害一時金)として支給されます。

具体的には、14段階の障害等級表のうち第1級から第7級の重い障害に対しては1年につき給付基礎日額の313日ないし131日分の年金、第8級から第14級の障害に対しては給付基礎日額の503日分ないし56日分の一時金が支給されることになります。

⑷ 遺族補償給付(遺族給付)

遺族補償給付(遺族給付)は、労働災害による死亡について、その遺族に遺族補償年金(遺族年金)または遺族補償一時金(遺族一時金)として支給されます。

ここでいう遺族とは、労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた配偶者(事実婚を含む)、子(胎児を含む)、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹であり(それぞれ年齢要件等あり)、これらのうち最優先順位の者が受給権者となります。

その額は、受給権者及びその者と生計を同じくしている受給権者となりうる者の人数に応じて、1人であれば給付基礎日額の153日分(ただし55歳以上または一定の障害状態にある妻の場合は175日分)、2人であれば201日分、3人であれば223日分、4人以上であれば245日分とされています。

⑸ 葬祭料(葬祭給付)

文字通り、労災によって労働者が死亡した場合の葬儀費用として支給されます。

⑹ 傷病補償年金(傷病年金)

労災保険法上の傷病補償年金は、労働災害による負傷・疾病が療養開始後1年6か月を経過しても治らず、かつ、その負傷・疾病による障害の程度が第1級ないし第3級(全部労働不能)に達している場合に、労働基準監督署長の職権により、その状態が継続している間支給されるものです。

その金額は、労災保険法別表第1により、傷病等級(第1級ないし第3級)に応じて、給付基礎日額の313日分ないし245日分と定められています。

⑺ 介護補償給付(介護給付)

介護補償給付(介護給付)は、障害補償年金(障害年金)または傷病補償年金(傷病年金)を受ける権利を有する労働者が、一定以上の等級の障害により、常時または随時介護を要する状態にあり、かつ、常時または随時介護を受けているときに、その請求により月単位で支給されるものです。

2 労働災害が起きた場合の会社の損失

⑴ 損害賠償金の支払い

ア  安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任

使用者は、労働者の身体・生命や健康について十分配慮すべき安全配慮義務を負っています(労働契約法第5条)。

建設業、製造業の会社等の従業員が作業に取り組む場合のように、業務そのものに危険が伴うような業種がありますので、会社は、労働者が安全に業務に取り組むことのできる環境を整えなければなりません。

また、作業そのものが危険でなくても、従業員が長時間労働あるいは上司のセクハラ・パワハラ等により身体的・精神的に過度な負担を受けることがないよう防止策を講じるなど就業環境に十分に配慮しなければなりません。

安全配慮義務を怠ったことにより、労災が発生し、労働者に重度の後遺障害が残った場合や労働者が死亡した場合には、その賠償額が数千万以上、場合によっては億単位になることもあります。

会社の事業規模によっては、損害賠償金の支払だけで会社の存続が危ぶまれることも少なくはありません。

イ  損害賠償は労災保険だけでは足りないのか

前記1「労災保険による補償」に記述したとおり、労災が発生した場合に、所定の手続きをとることによって、被災者あるいはその遺族に、労災保険上の給付がなされます。

しかし、業務中の事故で、かつ、会社に安全配慮義務違反が認められる場合には、会社側が労災保険給付とは別に、被災者あるいはその遺族に対し、慰謝料等の損害賠償金を支払わなければならない場合が多いといえます。

この点について、しばしば経営者の方から、「労災保険で補償されたはずであるのになぜ会社が追加で支払わないといけないのか?」というご質問をお受けしますが、追加で支払わなければならないのは、労災保険による給付が、被災者の損害の一部を填補するものにすぎないからです。

すなわち、労災給付による給付では、①慰謝料(傷害慰謝料・後遺障害慰謝料)は支給されません。また、②休業補償も事故前の給与の60%(特別支給金を加算したとしても合計80%)しか支給されません。さらに、③労災保険上の後遺障害等級が認定された場合であっても、障害補償給付だけでは、将来にわたる収入の減少(逸失利益)を全額填補するわけではない、といった特徴をあげることができます。

⑵ 社会的信用、企業イメージの低下

近年、企業の安全管理についての世間の目は非常に厳しいということができます。

仮に、会社が安全配慮義務を怠ったことを理由として、労災事故が発生しケガ人が出たり、あるいは、死亡者が出たりすると、取引先の信用を失うことになります。

また、事故ではなくとも、長時間労働や上司のセクハラ・パワハラ等によって従業員がうつ病になったり、あるいは、過労死・自殺したりするような事態に至った場合には、その会社は、取引先の信用を失うだけでなく、社会的にも大きなバッシングを受ける可能性があります。

近年は、インターネットの時代ですので、インターネット上の検索を通じて、どのような会社であるのかを調べることもできます。

もちろん、風評被害・誹謗中傷ともいえる評価が掲載されることもあり、それらに対しては相応の措置が必要ですが、重大な労働災害が起きたことが事実であれば、長い間、「安全衛生管理の意識を欠いた企業」、あるいは、「コンプライアンスの意識のない企業」という評価やイメージが根強く残ってしまいます。

したがって、そのような事態にならないよう、安全配慮義務を尽くし、労働災害が起きないような体制、あるいは、起きたとしても会社が安全配慮義務違反を問われないような仕組みを構築する必要があります。

3 労働災害、安全衛生管理については弁護士にご相談ください!

ここまで述べたように、労働災害を未然に防止するためには、安全衛生管理のための対策を講じることが非常に重要です。

仮に、労働災害が起きた場合であっても、その事故を隠蔽することなく、労災保険上必要な手続きを行うことが大切です。

労働災害の予防、災害発生後の解決には、労働実務を踏まえた検討・判断・手続の実行が必要となりますので、弁護士にご相談ください。

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