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Q&A:あるお客様から繰り返しクレームの電話が来る。どのように対応すべきか。

2024-07-05

Q(社長の質問)

 当社は、不動産の売買や賃貸管理を行う会社です。ある入居者(Aさん)の方から、「室内の設備が古いから変更しろ」などと度々クレームの電話やメールを受けていますが、当方が何度説明をしても納得してくれません。管理部門の社員は、Aさんへの対応に疲弊しています。どのように対応すればよいでしょうか。

A(弁護士の回答)

 まずは、クレームに至る経緯、クレームの内容について、しっかりと情報収集および分析することが大事です。Aさんに納得してもらうという、Aさんの主観的な納得感を重視すると、Aさんが納得するまで終わりが見えず、延々とやりとりを続けなければならない状況に陥ってしまいます。

 もちろん、Aさんの納得感も大事ですが、「法律上のルール」をあてはめて、対応を検討する必要があります。

 仮に、Aさんの言い分が、法的にみて根拠のあるもの、たとえばAさんの求めるように設備交換する必要がある場合、あるいは、御社が損害賠償責任を負う可能性がある場合には、Aさんの言い分と正面から向き合って対応する必要があります。これらの場合であっても、延々に対応するのではなく、「対応すべき範囲」を決定の上、その範囲で対応し、過剰な要求には応じないことが大切です。

 他方で、Aさんの言い分が全く根拠を欠いていて言いがかりに過ぎないと評価できる場合には、会社としての見解を一度伝えたら、それを変更せず、以後の対応は「従前伝えたとおりです」と事務的に対応するか、状況次第では、そもそも対応する必要もありません

 ポイントは、クレームの内容を「法律上のルール」にあてはめて、対応の要否や、対応方法を決定するということです。この見極めは、ときに難しい場合がありますので、対応に困っている事業者の方は、弁護士へご相談されることをお勧めします。

浦和セントラル法律事務所
弁護士 坂根 洋平

健康保険組合:第三者行為事案の求償について

2024-07-02

Q(役員の質問、悩み)

健保組合の役員を務めています。当組合の被保険者の方が、交通事故の被害に遭い、その治療において健康保険を使用していますが、健保組合負担分が累積しています。いわゆる「第三者行為」の事案ですので、加害者本人または加害者の保険会社へ求償したいのですが、被保険者の方と加害者との間で事故の過失割合について争いがあるようで、求償が滞っています。また、当組合は、事故の当事者ではないので、示談交渉の状況がわかりにくく、困っています。どのようにしたらよいでしょうか。

A(弁護士の回答)

まずは、積極的な情報収集に務めましょう。被保険者の方には、第三者行為の届出書と念書を出してもらって、定期的に、被保険者本人あるいは弁護士が就いていればその弁護士に、電話または書面により照会をかけて、求償や示談交渉に必要な情報(加害者本人の住所、氏名およびその保険会社名、担当者名、連絡先、事故状況、事故当事者の言い分、被害者の治療終了あるいは症状固定の見込みなど)を得ることが大事です。

次に、治療が長期に渡って健保組合負担分が嵩んでいるときは一定期間で区切って、あるいは、治療終了・症状固定のタイミングで、速やかに、加害者側の交渉窓口(本人または保険会社担当者)に連絡をして求償を開始する必要があります。

加害者側は、被保険者(被害者)との間で過失割合等に争いがあるという理由で支払を全額留保する可能性がありますが、その場合には、両当事者へ問い合わせを行って、再度詳しく交渉の経過を確認しましょう。被保険者は念書を差し出しており、健保組合は被保険者に対し照会をかける権利がありますので、被保険者にはきちんと情報提供について協力してもらう必要があります。

以上の手続きを踏んでも、求償が滞ってしまう場合には、健保組合として弁護士へ相談する必要があります。被保険者(被害者)が依頼した弁護士は、あくまで被保険者の利益のために動くので、積極的に健保組合のために動いてくれるとは限らず、むしろ、健保組合による求償には関心がないことが多いです。

第三者行為事案の求償にお悩みの健保組合様は、ぜひ一度当事務所までお問い合わせください。

浦和セントラル法律事務所
弁護士 坂根 洋平

Q&A:顧客の持ち去りをする従業員へ損害賠償請求できるか

2024-07-01

Q(社長の質問)

当社の従業員Aが、当社を退職した後に独立して当社と全く同じ事業を立ち上げました。しかも、当社の顧客に営業をかけているようです。当社は、この元従業員に対し、損害賠償請求はできますか。

A(弁護士の回答)

まず、Aさんが、御社と競業する事業を行ってはならないのかどうか(競業避止義務があるかないか)が問題になります。

一般的に、①退職時に競業禁止に関する誓約書を会社に出した場合や、②退職後の競業禁止を規定した就業規則がある場合には、退職後の競業避止義務が認められますが、他方で、③このような誓約書や就業規則がない場合には、元従業員の職業選択の自由を保護するため、退職後の競業避止義務は認められないと考えられています。

①②の場合には、誓約書や就業規則を手掛かりに、競業行為の差し止めを求めたり、御社の損失の内容次第では、Aさんに対し損害賠償請求を行ったりすることが可能となります。

他方で、③の場合には、就業規則等を根拠として責任追及することは困難ですが、Aさんの営業手法次第では、一般的な不法行為規定(民法709条)に基づいて、損害賠償請求を行うことが可能です。

もっとも、損害賠償請求を為しうるのは、Aさんの営業手法が、社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法な態様である場合に限定されます。具体的には、会社に秘密で顧客情報を持ち出してそれを営業行為に利用している場合や、顧客に対し虚偽の事実を告げて営業をかける場合等が該当します。これらの具体的な態様は、会社側に主張立証責任があるので、Aさんが使用していたパソコンや社用携帯を調査したり、現従業員から事情を聴いたりするなどして、証拠を固める必要があります。

元従業員による競業等にお悩みの経営者様は、ぜひ一度弁護士へご相談いただくことをお勧めします。

浦和セントラル法律事務所
弁護士 坂根 洋平

Q&A:債権回収のうち仮差押えの手続きについて教えてください

2024-06-26

Q(社長の質問)

退職した従業員の不正が発覚しました。会社のお金を着服しており、その金額も多額です。訴訟を提起する前に、その元従業員の預金や給料を仮差押えするという手続きがあることを知りました。仮差押えとはどのような手続きですか。

A(弁護士の回答)

訴訟を提起して判決を得るまでの間に債務者が財産を隠匿してしまうおそれがあるなど、債権を保全しておく必要がある場合に、債務者の財産のうち、債権額に相当する財産を差し押さえることができる手続きです。 

仮差押えの効果として、たとえば、債務者の銀行預金を仮に差し押さえた場合、第三債務者である金融機関に対して、裁判所から仮差押え決定書が送付されます。

その結果、金融機関は、その預金者(債務者)に仮差押えがなされたことを知ることができますので、債務者の対金融機関における信用は著しく低下することになります。

また、債務者の給与債権の一部を仮に差し押さえた場合、第三債務者である勤務先も事情を知ることになります。

債務者としては、金融機関や勤務先からの信用を回復するため、仮差押えのなされた状態をいつまでも放置しておくことができないと考えるようになりますので、債権者に対し債務を弁済したり、あるいは、債務者の側から債権者に対し和解条件を提案するということもあります。

仮差押えにより財産を押さえることができれば、訴訟で確定判決を取得した後、仮差押えを行った財産をそのまま強制執行することができます。

なお、仮差押えの決定を発令してもらうためには、あくまで「仮」の差押えであることから、法務局に担保金を供託する必要がありますが、担保金の金額は債権額の2~3割となるのが一般的です。債権額が高額で、かつ、担保金額が高額になる可能性がある場合には、仮差押えをする際の債権を、その一部に限定することによって、(その2~3割である)担保金額を軽減するという方法も考えられます。

債権回収や仮差押えを検討中の方は、ぜひ弁護士までご相談いただければと思います。

浦和セントラル法律事務所
弁護士 坂根 洋平

Q&A:従業員の労災申請に必ず協力しなければならないのか

2024-06-22

Q(社長の質問)

従業員Bが、突然、「会社の仕事がきつくて体調を崩し、うつ病を発症したので、労災申請したい」と言ってきました。従業員Bはほとんど残業をしておらず定時で帰宅していますので、会社の業務がきついはずがないと考えています。このような場合でも、会社は事業主として労災申請に協力したり、申請書の記載事項を証明しなければならないのでしょうか。

A(弁護士の回答)

労働者災害補償保険法施行規則第23条は、次のとおり定めています。

(事業主の助力等)
第23条 保険給付を受けるべき者が、事故のため、みずから保険給付の請求その他の手続を行うことが困難である場合には、事業主は、その手続を行うことができるように助力しなければならない
2 事業主は、保険給付を受けるべき者から保険給付を受けるために必要な証明を求められたときは、すみやかに証明をしなければならない。

以上の規定からすると、会社は、Bさんの労災申請へある程度協力し、記載事項に誤りがないのであれば労災申請の書類へ事業主としての証明を行わなければなりません。

もっとも、「助力」や「証明」といっても、事実ではないことを証明する必要はありません。
事業主証明で求められる証明事項のうち、客観的な事実として証明可能なものについてのみ証明し、それ以外の事実に反するものや、会社として証明しようがないものについては証明せず、場合によっては、会社の見解(Bさんはほとんど残業しておらず業務負担が軽いこと、その他うつ病発症について別の原因が考えられる場合にはその内容など)を別紙として整理した上で添付したり、あるいは、別途、事業主の意見として労働基準監督署へ提出するとよい場合があります。

従業員から労災申請の要望が出て、その対応に悩んだ場合には、弁護士へ相談することをお勧めします。

浦和セントラル法律事務所
弁護士 坂根 洋平

Q&A:能力不足を理由に従業員を解雇できるか

2024-06-21

Q(社長の質問)

入社して3年程度の従業員Aがいますが、なかなか業務に適応できず、ミスを繰り返しており営業成績もとても低い状況です。Aよりも後に入社した従業員の方が会社の業務に慣れて成績を上げており、Aは上司だけではなく、後輩の従業員からもフォローを受けて仕事をしています。成長の見込みがないので、できれば早いうちに解雇したいのですが、可能でしょうか。

A(弁護士の回答)

労働契約法第16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めています。
法律上、解雇が認められるほどの能力不足とは、雇用関係が維持できないほどの重大な能力不足で、かつ、改善の見込みがない場合をいいます。

Aさんは、後輩などの他の従業員に比べて成績が低いようですが、成績が低いだけでは、労働契約法第16条の要件を充足させることは非常に難しいといえます。実際に裁判例でも能力不足を理由とする解雇が有効と判断されるケースは少ないといえます。

能力不足を理由とする解雇が有効となるかどうかのポイントは、①当該従業員を雇用し続けることによって業務運営に重大な支障を及ぼす、②当該従業員の能力不足を理由とするミスが頻発しており、会社に現に損失が生じている、③上司らが繰り返し改善指導しても、改善の兆しがみられない、④上司らによる成績評価が客観的で平等である、といった要件をいずれも充足する場合に、能力不足を理由とする解雇が認められやすいといえます。いずれか1つでも欠く場合には、解雇の言渡しに慎重にならなければなりません。

浦和セントラル法律事務所
弁護士 坂根 洋平

Q&A:労災事故の報告の要否について教えてください

2024-05-24

Q(社長の質問)

建設業を経営しています。会社(使用者)は、どのような場合に、労働基準監督署へ労災事故発生の報告をする必要があるのでしょうか。仮に従業員がけがをしたとしても、ごく軽傷で、休業していない場合でも、報告をする必要があるのでしょうか。

A(弁護士の回答)

 業務中の事故により従業員がけがをした場合、病院で治療を受けたり休業したりすることがありますが、このような場合には労災保険から療養補償給付や休業補償給付を受けるための請求手続きを行うことになりますが、これらの手続きとは別に、管轄の労働基準監督署へ「労働者死傷病報告」という書類を提出する必要があります。

 この「労働者死傷病報告」の提出期限は、休業をした日数により異なり、休業4日以上もしくは死亡の場合は、災害発生後遅滞なく労働基準監督署へ提出しなければなりませんが、休業が4日未満であれば、四半期ごとに発生した労働災害を取りまとめて該当する期間の最後の月の翌月末日までに報告すればよいことになります。

 他方で、労災事故が発生したとしても、労働者が仕事を休業していない場合には、「労働者死傷病報告」の提出は不要です。

浦和セントラル法律事務所
弁護士 坂根 洋平

Q&A:退職の手続きを進める場合、退職届は絶対必要か

2024-03-25

Q(社長の質問)
 社員が、退職すると言ったので、口頭で受理しましたが、その社員は退職届を出してくれません。このまま退職の手続きを進めてもよいのでしょうか。

A(弁護士の回答)
 社員が口頭で会社を辞めると言って出て行ってしまったような場合であっても、客観的証拠がないと口頭での退職合意が成立したと会社が主張しても認められない場合があります。
 したがって、退職届を提出させて退職の申出があったことの証拠を残しておくことが基本となります。

 しかし、会社に対し何らかの不満がある社員の場合、自分で
会社を辞めると言ったのに、いつまでも退職届を提出しない場合や、前言を翻して退職しないと言い出す場合もあります。
 そのような場合、会社として前言どおりに退職してもらいたい場合は、退職の合意があったことを証明し得る証拠、たとえば、退職を前提としてやりとりしたメールがある健康保険証を返却した私物を持ち帰ったなどの事実があるかどうかを検討する必要があります。

 検討の上で、退職の合意を証明できる場合には、退職の手続きを進めることにとくに問題ありません。その社員との間でトラブルになりそうな場合には、当該社員に対し、退職に至る事実経過、退職日を明記した書面を送付し、会社の意向をはっきりと通知しておくとよいと考えられます。

浦和セントラル法律事務所
弁護士 坂根 洋平

【お知らせ】年末年始の執務について

2023-12-30

年末年始は、下記の通り、お休みをいただきます。

【年末年始スケジュール】

12月30日(土)~1月3日(水) 休み

1月4日(木)より通常どおり執務

メールやお問い合わせフォームからのご連絡は可能ですが、

お返事がお休み明けとなりますので、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。

弁護士  坂根 洋平

顧問弁護士契約のメリットについて

2023-12-08

当法律事務所では、複数の会社様と顧問弁護士契約をさせていただいております。業種は医療、不動産、管理組合など多岐にわたり、広く対応しております。

顧問契約のメリットとしては、突発的なお困りごとについて、即時に対応できることだと思います。経営者の皆様にとって、お困りごとが発生してから、複数ある法律事務所の中から弁護士を選ぶことは、心理的、時間的負担は大きいだろうと思われます。

顧問契約をご利用いただくことで、日頃から信頼関係を事前に構築することができますので、突発的なお困りごとが発生した際には、安心してご依頼いただけるかと存じます。

顧問弁護士料金ですが、企業の方は3万円~(税別)とご案内しております。また、当事務所ではトライアルも可能です。詳細はこちらのコラムをご確認ください。

ご検討中の方はどうぞお問い合わせフォームよりご連絡ください。

よろしくお願い致します。

弁護士 坂根 洋平

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