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Q&A:顧客の持ち去りをする従業員へ損害賠償請求できるか
Q(社長の質問)
当社の従業員Aが、当社を退職した後に独立して当社と全く同じ事業を立ち上げました。しかも、当社の顧客に営業をかけているようです。当社は、この元従業員に対し、損害賠償請求はできますか。
A(弁護士の回答)
まず、Aさんが、御社と競業する事業を行ってはならないのかどうか(競業避止義務があるかないか)が問題になります。
一般的に、①退職時に競業禁止に関する誓約書を会社に出した場合や、②退職後の競業禁止を規定した就業規則がある場合には、退職後の競業避止義務が認められますが、他方で、③このような誓約書や就業規則がない場合には、元従業員の職業選択の自由を保護するため、退職後の競業避止義務は認められないと考えられています。
①②の場合には、誓約書や就業規則を手掛かりに、競業行為の差し止めを求めたり、御社の損失の内容次第では、Aさんに対し損害賠償請求を行ったりすることが可能となります。
他方で、③の場合には、就業規則等を根拠として責任追及することは困難ですが、Aさんの営業手法次第では、一般的な不法行為規定(民法709条)に基づいて、損害賠償請求を行うことが可能です。
もっとも、損害賠償請求を為しうるのは、Aさんの営業手法が、社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法な態様である場合に限定されます。具体的には、会社に秘密で顧客情報を持ち出してそれを営業行為に利用している場合や、顧客に対し虚偽の事実を告げて営業をかける場合等が該当します。これらの具体的な態様は、会社側に主張立証責任があるので、Aさんが使用していたパソコンや社用携帯を調査したり、現従業員から事情を聴いたりするなどして、証拠を固める必要があります。
元従業員による競業等にお悩みの経営者様は、ぜひ一度弁護士へご相談いただくことをお勧めします。
浦和セントラル法律事務所
弁護士 坂根 洋平