Q(社長の質問)
社員が、退職すると言ったので、口頭で受理しましたが、その社員は退職届を出してくれません。このまま退職の手続きを進めてもよいのでしょうか。
A(弁護士の回答)
社員が口頭で会社を辞めると言って出て行ってしまったような場合であっても、客観的証拠がないと口頭での退職合意が成立したと会社が主張しても認められない場合があります。
したがって、退職届を提出させて退職の申出があったことの証拠を残しておくことが基本となります。
しかし、会社に対し何らかの不満がある社員の場合、自分で会社を辞めると言ったのに、いつまでも退職届を提出しない場合や、前言を翻して退職しないと言い出す場合もあります。
そのような場合、会社として前言どおりに退職してもらいたい場合は、退職の合意があったことを証明し得る証拠、たとえば、退職を前提としてやりとりしたメールがある、健康保険証を返却した、私物を持ち帰ったなどの事実があるかどうかを検討する必要があります。
検討の上で、退職の合意を証明できる場合には、退職の手続きを進めることにとくに問題ありません。その社員との間でトラブルになりそうな場合には、当該社員に対し、退職に至る事実経過、退職日を明記した書面を送付し、会社の意向をはっきりと通知しておくとよいと考えられます。
浦和セントラル法律事務所
弁護士 坂根 洋平