Q(社長の質問)
退職した従業員の不正が発覚しました。会社のお金を着服しており、その金額も多額です。訴訟を提起する前に、その元従業員の預金や給料を仮差押えするという手続きがあることを知りました。仮差押えとはどのような手続きですか。
A(弁護士の回答)
訴訟を提起して判決を得るまでの間に債務者が財産を隠匿してしまうおそれがあるなど、債権を保全しておく必要がある場合に、債務者の財産のうち、債権額に相当する財産を差し押さえることができる手続きです。
仮差押えの効果として、たとえば、債務者の銀行預金を仮に差し押さえた場合、第三債務者である金融機関に対して、裁判所から仮差押え決定書が送付されます。
その結果、金融機関は、その預金者(債務者)に仮差押えがなされたことを知ることができますので、債務者の対金融機関における信用は著しく低下することになります。
また、債務者の給与債権の一部を仮に差し押さえた場合、第三債務者である勤務先も事情を知ることになります。
債務者としては、金融機関や勤務先からの信用を回復するため、仮差押えのなされた状態をいつまでも放置しておくことができないと考えるようになりますので、債権者に対し債務を弁済したり、あるいは、債務者の側から債権者に対し和解条件を提案するということもあります。
仮差押えにより財産を押さえることができれば、訴訟で確定判決を取得した後、仮差押えを行った財産をそのまま強制執行することができます。
なお、仮差押えの決定を発令してもらうためには、あくまで「仮」の差押えであることから、法務局に担保金を供託する必要がありますが、担保金の金額は債権額の2~3割となるのが一般的です。債権額が高額で、かつ、担保金額が高額になる可能性がある場合には、仮差押えをする際の債権を、その一部に限定することによって、(その2~3割である)担保金額を軽減するという方法も考えられます。
債権回収や仮差押えを検討中の方は、ぜひ弁護士までご相談いただければと思います。
浦和セントラル法律事務所
弁護士 坂根 洋平